イタチなんて来ないよ

ビオトープ」って作ったことありますか?

何日か連続投稿になりますが、僕が大学3年生の頃に「天邪鬼な後輩くん」と2人で泥だらけになりながら大学のキャンパスの裏に巨大なビオトープを作ったというお話をしようと思います。

僕はこの天邪鬼な後輩くんに出会ったことで「言葉と行動の非対象性(必ずしも、そのひとが言っていることからその人の性格や行動を判断できるわけではないということ)」について考える良い機会になるのですが、それを抜きにしても一生忘れられない面白いエピソードだったので思い出しながら書いてみようと思います。


F先生とイタチ

僕は当時、社会学系のゼミに入っていたのですが、生態学ゼミの先生(以下F先生)とも仲良しでして、夏休みになるとよくF先生と僕を含む学生数名で、生態学の研究のために森や林に出かけて行って草木や木の実などのサンプル集めをしていました。

それ以外によくやっていたのは、森の中にカメラトラップを設置して、野生動物の生態を観察するというものでした。真面目な学生が多いゼミでしたので、みんな率先して研究に協力していましたし、とても楽しみながら活動していたのをよく覚えています。

ちなみにカメラトラップ(Camera Trap)とは、野生動物の観察や監視、研究のために使用される技術の一つです。カメラトラップは、動物が特定の場所に現れた際に、自動的に写真やビデオを撮影するデバイスです。

一般的には、野生動物の行動や生態学的な研究、保護活動、環境モニタリングなどのさまざまな目的で使われています。ゼミで使っていたものは、パッキンのついた樹脂製の箱に赤外線センサーをくっつけただけで、市販のデジタルカメラを入れて使う手作りみたいなものでした。カメラも数世代前の古いものを使っていて、お金がないゼミなんだな…と、学生ながら少し不憫に感じていたのを覚えています。

ある日、F先生のゼミ室を訪れると「おきもちくん!すごいよ!この大学の周辺には、まだイタチがいるみいたいだ!」と、F先生は目を輝かせながら話しかけて来ました。僕が通っていたキャンパスの周辺には、確かに自然豊かな公園や、人が立ち入らない小さな森のようなものが点在してはいましたが、東西南北を大きな幹線道路に囲まれ、住宅地の開発も進み、とてもじゃないけど野生動物が自由に暮らしていくのに良い環境とは言えませんでした。

F先生曰く、キャンパス周辺にある公園や小さな森で学生たちと研究活動を行っていたとき、カメラトラップの端っこにイタチが映っているのを発見したそうです。写真を見てみると、確かにイタチ…のようなものが映り込んでいるのが見えましたが、これがまた夜中に撮影されたものだったので、ピンボケしている上にザラザラで、正直「確かにイタチだ」とは言い切れない写真でした。

F先生とビオトープ

しかし、F先生のときめきが止まることはなく、「ビオトープを作ろう!ビオトープを作ろう!」と息巻いていました。ビオトープ(biotope)は、生態学的な観点から定義された、生態系の単位であり、ある特定の地域や場所において、特定の生物群集や生態系が存在する生態的な環境を指します。

ビオトープは、生物学的、地理学的、気候学的な要因などが相互作用して、特定の条件下で特定の生態系が発展する場所です。要するに簡単にいうとビオトープは、「生き物の住処」ということです。F先生は学内にビオトープを建設して、そこにイタチを誘引しようと考えたのでした。

ビオトープを作るには、ある程度の広さのある場所で、特定の生態系や生物群集が繁栄できるような環境を人工的に再現する必要があります。また、野生動物を誘引する要素を人工的に作る必要もあるので、例えば、巣箱、巣穴、岩、木の隠れ家、餌台なども自分たちで作らなければなりません。それ以外にも、池、川、水たまりなどを再現したり、その水質を維持するためのろ過装置も設置する必要があります。

要するに、ビオトープの制作には、お金も時間も掛かるし、とても大変な作業なのです。

僕はF先生から、F先生が学生の頃に作ったビオトープの話を散々聞かされていたので、それが簡単なことではないことは何となくですが理解していました。ですので、F先生や他の学生たちに気づかれないように、そーっとゼミ室を後にしようと…。

「おきもちくん!」

それからいろいろあって数週間後、ビオトープの制作は生態学ゼミのとある学生に「卒論のテーマ」という名目で任されることになり、僕はなぜかその後輩くんをお手伝いする役を仰せつかったのでした。

それから数ヶ月の間に、ビオトープ建設という難題を押し付けられた「後輩のイトウくん」と、なぜか他学部のゼミの後輩を手伝うことになった僕は、2人で泥だらけになりながらビオトープ建設をする羽目になるのですが、運命やいかに…この続きはまた次回。

ご清観いただきありがとうございました。

以上、また明日!