家を出るときはいつも死を覚悟して

仕事に行くときや友人と食事に行くときなど、家を出るときは決まって、部屋の片づけをしてから玄関を出るようにしているんです。

家の中のモノにはひとつひとつに「住所」が決めてあって、使ったら戻す、使ったら戻す、の繰り返し。テレビやエアコンのリモコンに至っては、置く場所だけでなく角度も決まっています。

普段から、使ったら戻すという癖付けができているので、部屋の中が極端に散らかってしまうということはないのですが、疲れていたり、忙しかったりして乱れることはたまにあります。

でも、家を出るときは必ず、元の状態(住所に戻った状態)を作ってから出るようにしているんです。

いつからそうするようになったのか覚えていないのですが、結構「後ろ向きな意味」があって、それは「外出中に不慮の事故にあっても良いように」だったりするんです。というか、それ以外に理由はない…。

もし外出中に不慮の事故にあったりして、両親や友人が僕の家に何かの用事で入らなければならなくなったとき、「普段は片づけができているのに、たまたま散らかっている部屋」を見て、「普段から散らかっている」と思われるのが癪だからです。

今思うと、とてもくだらない理由ですよね…。

どうしてそんなことを考えるようになったかというと、30代になってから友人の訃報を聞かされる機会が増えたからだと思います。昨日まで元気だったひとが、突然亡くなったりすることは珍しくないと感じています。

要するに、僕が家を出る前に部屋を片付ける理由は、自分の命は永遠じゃないってことを自覚したからだと思うんです。

理由はなんであれ、帰って来た時に部屋が片付いた状態というのは気持ちが良いものです。どこに何が入っているのか目をつぶっていても手に取ることができるので探し物をする機会は減りました。

ちなみに、毎日寝る前に部屋の片づけをしてから寝るようになったのは、東日本大震災が起きてからです。

あの時は日本中どこにいても揺れました。モノが倒れたりすることこそなかったですが、ドアにしがみ付くくらいには恐ろしい体験だったことを今でも鮮明に覚えています。

僕は普段メガネを掛けています。割と重度の近視で、裸眼では5㎝より先のものは全てぼやけてしまう。時々、思うのは「もし、寝ている間に地震が起きたら…」ということです。

寝る前に部屋の片づけをする理由は、寝ている間に地震が起きて、ガラスが割れたりモノが散乱したりしないように。もしメガネが吹っ飛んだら、床に何が落ちているか見えないから。

でも、そこまでしておきながら、家の中に靴を置いておくことには抵抗があるのでやっていないんですよね。だから、せめて倒れたら割れるものや、怪我をするかもしれない道具などは、すべて引き出しにしまってから寝るようにしています。

ときに、技術の進歩というのはすごいもので、こんなに度の強いメガネなのに、超薄型レンズは本当に薄いからすごい。

そして、メガネを掛けていると、こんな不真面目な僕でも真面目そうに見えるからすごい。